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ブログNo4で言及した論文「感情と意志決定」について内容の概要を紹介します。

2020.09.15

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5 感情と意志決定(2)

ブログNo4で言及した論文「感情と意志決定」について内容の概要を紹介します。

  2015年に発刊された米国心理学会の論文Annu. Rev. Psychol. 2015. 66:799-823 ‘Emotion and Decision Making’ 「感情と意志決定」のAbstract(概要)を翻訳しますと次のように記載されています。

 近年、感情科学における大変革が起きており、意志決定理論のパラダイムシフトを起こす可能性がある。本研究では、感情は、説得力があり、広汎性を有し、予測可能であり、時として有害であり、時として利益をもたらす意志決定の原動力であることを明らかにする。様々な分野で、感情が判断と選択に影響を及ぼすメカニズムに重要な規則性が表れた。我々は感情と意志決定についての過去35年間の研究を整理し分析した。その結果、我々は感情浸透選択モデル(emotion-imbued choice EIC model)を提案する。これは伝統的な合理的判断理論と最新の感情研究を合成した科学モデルである。

 提案されているEICモデルですが、それを解説した図がこの論文に載っていますので勝手ながら翻訳して(注)掲載します。詳細についてはこの論文を読んでいただきたいのですが、特徴的なことは、感情が意思決定に影響を与えるメカニズムを明らかにしていることです。これは従来の意思決定理論にはありません。このメカニズムを説明する例として次のような例を用いています。飼い犬が死んで悲しみの最中にいる人が今50ドルを受け取るか1か月後に100ドル受け取るかの2つの提案を受けたものとします。その人の性格はこのどちらの提案を受けるかの意思決定に影響を与えます。もし報酬が得られるまでの時間遅延によって報酬の価値が著しく低くなるとその人が感じるならば1か月後に100ドルを受け取る選択肢は選ばないでしょう(図のB線)。従来の理論(Appraisal-tendency framework ATF)によれば、その人の悲しみは偶発的なものですが(図のH線)、その悲しみにより1か月後の報酬を犠牲にしても(図のG線)直ぐに報酬を受け取るように動機付けられてしまうと説明されます。しかしながら、お金を受け取ることが出来るという将来に対するポジティブなフィーリングによりその人の悲しみが軽減される場合があります(図のF線)。反対に現在の悲しみによりどちらの提案も大した報酬では無いと思って期待を打ち消してしまう場合もあります(図のI線)。最終的には、報酬を受けるまでに時間がかかることへのいらだち(図C’線)と2つの報酬選択肢の差への期待・心配(図G’線)のバランスによりその人の現在の感情が色づけられます。最終意思決定は、悲しみにより修正された価値割引率、金銭的な目標、その人が報酬をどう評価しているかの組合せにより予測されると思われます(図のD線)。

   注:翻訳は当方が勝手ながら行ったので原著者の意図を忠実に反映していない可能性有。

 本論文は心理学研究の学術論文ですので研究者向けに書かれていますが、感情研究の一旦を垣間見ることが出来るもので、感情ビジネス関係者の一読をお勧めます。

以上

エグゼクティブアドバイザー 都筑一雄


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