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63 ストレスと音声感情解析|音声活用ブログ
2023.12.21
Nemesysco社ストレステクノロジーマーケット
63 ストレスと音声感情解析
「ストレス」はわかっているようで良くわからない言葉です。そこで調べてみる、イスラエルの音声感情解析ソフト開発メーカーであるNemesysco社のホワイトペーパー(LVA and the Emotion Logic HUB – White paper – 2023)にストレスとはどのようなものかがわかりやすく記載されていました。興味深いので解説したいと思います。
落語に「藪医者」や「犬の目」という医者を扱った演目があります。その枕話で薮医者の常套句に「寿命と手遅れ」があり、重病の患者が運ばれてくると神妙な顔で「ご寿命ですなぁ」とか「手遅れですなぁ」と言えば周囲が納得するという下りがあります。
屋根から落ちて怪我をした子供が医者に連れ込まれた時にその医者が神妙な顔つきで「手遅れですなぁ~」と言いました。親は驚いて「先生、手遅れと言ってもたった今屋根から落ちたばかりなんで、これが手遅れなら一体いつ連れてくれば良いんで?」と尋ねると医者はやはり神妙な顔つきで「うむ、落ちる前なら何とか」・・・
筆者自身の話で恐縮ですが、先日、何か体が不調なので中学時代からの親友で学生時代は一緒に落語研究会に入っていて今はそれなりの医者になっている友人に相談したところ、この友人はニヤッと笑って、「うむ、それはストレスですなぁ~」と返事してきたので2人で大笑いしました。
現代はストレスという言葉が氾濫しています。テレビの健康番組や健康雑誌でもストレスが体調不良の原因というのは良く聞きますし、ストレスの無い生活を心がけましょうと良く言われます。ではストレスとは何かと問うと余り納得のいく答を聞いた試しが無く、せいぜい「ストレスとは外部からの刺激や圧力に対して適応するための身体的・心理的な反応」という一般人には良くわからない答です。さらに上述の友人の医者に「ではどうやってストレスに対抗するのか?」と聞いたところ「刺激の無い生活をしろ」とのご宣託。そんな聖人君子のような生活ができないから苦労しているので筆者にとってはストレスという言葉は長年謎の呪文のようでした。
ところが、最近、我々の提携先であるイスラエルの音声感情解析ソフト開発メーカーNemesysco社の子会社Emotion Logic社のホワイトペーパー(LVA and the Emotion Logic HUB – White paper – 2023)にストレスとはどのようなものかがわかりやすく記載されていました。このブログの読者の方にもストレスとはどういうものかに興味をお持ちの方がいらっしゃると思いますので紹介したいと思います。
4つの基本感覚(Four Basic Sensations)
このホワイトペーパーでは、Nemesysco社の音声感情解析テクノロジーLVAが解説されているのですが、LVA技術は次の4つの基本感覚を集中的に解析すると 述べられています。
-
-
- ストレス(Stress)
- 興奮(Excitement)
- 混乱(Confusion)・・・認知的ストレス(Cognitive Stress)とも言います。
- エネルギー(Energy)
-
これらの感覚は基本的な感覚で、どのような論理的活動の影響をも受けない人間が本能的に持つ感覚です。また、キーになる感情状態(幸福、激情、怒り、など)の基礎情報を与えます。
これらの基本感覚のうち最上位に挙げられているのがストレスです。
ストレスの定義
では本題であるストレスについてどのように解説されているかを紹介します。このホワイトペーパーでは次のようにストレスを定義しています。
「ストレスは臨床的に『脅威に対する身体反応』と定義されます。脳内の『扁桃体』(恐怖や不安などの感情を処理する役割を持つ部位)が我々の身体に対する潜在的なリスクを検出し、身体にリスクに備える行動をするようにと警告を送ります。これにより身体は通常モードから「サバイバル(生存)モード」に移行します。要するにこの時点で身体は『ここにいたくない』ことを切望する状態になっています。」
さらに次の解説が載っています。
「興奮はストレスと真逆の状態です。身体はポジティブな期待を持ち、現在受けている刺激をもっと受けたい、『ここにもっといたい』と思う状態です。」
「もう一つのストレスであるCognitive Stress(認知的ストレス)は混乱(Confusion)とも言われます。頭の中で同時に走っている2つかそれ以上の論理プロセスの間に矛盾がある状態を言います。認知異常(Cognitive Disorder)ともいわれます。」
筆者はこの定義に合点がいきました。ストレスを誘発するのは単なる刺激では無く、生物体の存在が脅かされるかもしれないような脅威という刺激に対する身体反応です。例えば残業時間制限を大幅に超えて仕事を続ける、嫌な上司と仕事をする、トラブルが頻発する、身近な人が亡くなってしまう、等、の事態が自分の周囲に起こると、人間としての生存が脅かされるリスクと感じてストレスとして発現するのです。これは自分の生存確率を上げるための本能がストレスという警告を発していることを意味し、生物の自己防衛本能に従っていることになります。ストレスを感じる人は感じない人よりも生存確率が高いと言えるでしょう。
生存リスクは取り去らなくてはなりません。すなわちストレスをむしろ積極的に感じ、それを取り去る行動をとることが必要です。この為には早期発見・早期対処が大切です。音声感情解析テクノロジーはストレスの早期発見に絶大な威力を発揮します。
ストレス報告と警告レベル
Nemesysco社の音声感情解析テクノロジーLVAでは、ストレスの程度を話者の音声を解析することにより検出することができ、ストレスの早期発見に役立たせることができます。このホワイトペーパーでは次の7つのストレス程度が記載されています。
- ストレスなし
臨床的なストレスが検出されない状態。(注意:この状態は話者に怒りの感情があるときにも示されます。怒りは脳がストレスを解消するために使う方法だからです。)
- ストレス低
低レベルのストレスが検出されたが、アラートを出す程の程度ではない状態。
- 一時的ストレス(低)
時々、比較的高いレベルのストレスが検出されるが、認知ストレスは低く、アラートを出すまでのことは無い状態。
- 一時的ストレス(中)
しばしば比較的高いレベルのストレスが検出されるが、認知ストレスは低く、まだアラートを出さなくても良いと思える状態。
- 警告レベルストレス(中)
システムは時々高レベルのストレスを検出し、被験者が適切にリラックスすることができない状態。何らかの肯定的なアクションを取るタイミング。
- 警告レベルストレス(高)
システムは非常に高い頻度で高ストレスを検出し、被験者が適切にリラックスすることができない状態。これは非常に高いストレスレベルの状態で適切に処置をする必要がある。
- 危険レベルストレス
システムが危険レベルのストレスを検出し、何らかの症状を示す直前の状態。直ちにストレスを取り去るアクションを取る必要がある。
ストレスの人間ドック
予防医学の基本は「早期発見・早期対処」です。人間ドックでは病気の症状を自覚する前に体の異常を早期に見つけて、投薬や外科的な処置で早期対処し、健康を維持します。ストレスも同じです。企業で音声感情解析により従業員のストレスレベルを定期的に測定し、ストレスを自覚する前に検出し、もしアラームが出たら本人がストレスを感じていなくても、直ちに現在の仕事あるいは/及び生活環境を変え、脅威と感じている刺激源を突き止め、その刺激源を取り除くあるいは忘れさせる対処が必要です。ストレスを取り除く対処を行えば従業員の健康を維持できるでしょう。ストレスの人間ドックです。
近年、日本の労働者のメンタルヘルス不調は深刻な問題となっています。厚生労働省の調査によると、2021年の精神障害による労災認定件数は15,838件で、過去最高を更新しました。音声感情解析テクノロジーを用いてストレスの人間ドックを普及させ、メンタルヘルス不調を少しでも低減させることができる日が来ることを筆者は願ってやみません。
お知らせ
2020年8月から当社のホームページでブログを執筆してきました。事情があり、今回で筆者担当のブログは最後になります。ご声援ありがとうございました。
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