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33 パウエル議長の感情推移から読み解くインフレ抑制の決意|音声活用ブログ
2022.06.06
テクノロジー
33 パウエル議長の感情推移から読み解くインフレ抑制の決意
BSテレビ東京の情報番組『日経モーニングプラスFT』(2022年5月18日)にて、【FRB議長の音声分析で探る米金融政策】と題した解説が放映されました。これはFRB連邦準備理事会:日本における日銀と同じ役割のパウエル議長の5月4日記者会見の音声を、当社の音声感情解析ESAS(イーサス)で解析を行い、経済専門家の方にその結果についてコメントして頂いた番組です。番組では経済専門家の方が議長の感情推移にコメントをしていましたが、このブログでは音声感情解析の専門家の立場からFRB議長の考えている事を推測したいと思います。
注:尚、このブログで述べる見解は本ブログ筆者個人の文責であり、当社を代表した見解ではありません。
2022年5月18日放映の『日経モーニングプラスFT』ではパウエル議長の発言を感情解析した結果と、発言内容を比較して次のように述べています。
- 全体を通じてパウエル議長の感情のブレは非常に小さい(当社の解析の紹介)
- 議長の今回(5月6日)の冒頭発言は、前回(3月16日)の発言に比べて、ストレス、思考、集中がより高く出ており、不安が低下している。(事実関係の紹介)
- この傾向が出た理由を、経済専門家の立場から解説及び推測している。(概ね妥当な感情変化と認識されている)
- 「0.75%の利上げがあるか?」という記者質問に対する回答時に、不安感情が大きく向上しているという事実関係を「議長は0.75%を気にしている」と解説している。但し、経済状況の考察から解説者の方は0.75%の利上げは考えにくいと結論している。
この番組は経済を専門としたもので、公定歩合の金利の動向が関心事項ですから、議長の感情推移から0.75%の利上げは無いと推定しています。
感情解析から見た感情変化の解釈
番組では3月16日と5月4日の会見での議長の感情指標値の比較をしています。下図はその比較を示した画面です。
番組ではストレスと不安に特に注目して解説しており、その他の感情指標については余り言及していません。ここで2つの会見で代表的な感情指標の出力の比を調べてみます。
これからわかるように「不安」の感情の変化が最も大きい事がわかります。「不安」は困惑感情と同じで「困ったな」という感情です。次に変化の大きい感情は「思考」で感情解析システムでは集中的な深い思考(intensive thinking)すなわち熟慮を意味します。この指標はストレスや集中よりも大きな変化を示しており、筆者は大きな関心を持ちました。下記の図は「思考」の感情値出力を時系列的に示した図です。
横軸は時間を示し縦軸は感情値出力を示します。この値が大きいほど深い思考をしていることを意味します。この図から明らかなように5月4日の会見時の方が3月16日の会見時よりも思考感情の平均値が大きい事がわかります。前回はWeb形式で行われ、今回は2年ぶりの実会見であることが影響しているのかも知れません。5月4日では時間値115あたりで大きなピークが観察されます。思考のピークの時間帯でパウエル議長が何を話しているのかを調べると、「高いインフレは食料費、住宅費、交通費などの生活必需費用の高騰に対応困難な人々に大きな苦痛を与える。」(筆者訳)と述べています。だから、インフレを押さえ込むことが重要だと認識しているようです。
音声感情解析の観点から、筆者は個人的見解として次の通り想像しました。社会の分断が深刻化している米国社会でのインフレの進行は社会格差を助長し、深刻な社会不安を引き起こすとパウエル議長は思考し、インフレを押さえ込み物価を安定させることにFRBは全力を注ぐとの決意を示したのではないか。今回初めて会見冒頭で「アメリカ国民に直接話す。」と言ったことも、インフレは社会の敵でありあらゆる手段を使って解消しなければならないとの決意を伝えたかったからだと思われます。
以上
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